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一家の大黒柱であるお父さんが、三ヶ月も遠い外国に行ってしまうのは
家族にとってはとても寂しかったでしょう。
そしてお父さんも、かわいい子供たちや最愛の妻からの手紙を心待ちにしていたに違いありません。
その証拠にお父さんは何年も何年もその手紙を大切に保管していたのです・・・。
克久くんの手紙 初音ちゃんの手紙 梢ちゃんの手紙 早苗ちゃんの手紙 良次くんの手紙
この前、手紙を書きませんでどうもすみません、僕の最愛の父から送っていただいた
シャープペンソル、ひこうきなどありがたくいただきました。
この手紙は、パパからもらったシャープペンソルで書いています。
今伊東にいます。この間、おじいちゃんの四十九日の時、床の間に、大家さんからいただいた
お花と、お水をそなえおじいちゃんの戒名、(孝徳院楓橋日文居士)というなをふだに書き、
みんなでおがみました。パパは毎日ビールをのんだり、ごちそうをたべたりしているということです
大いに、食い飲むのはいいのですけれどたべすぎておなかをこわしたり、おじいちゃんのように
いかいようになったりしてはこまります、くれぐれもたべすぎないようにして下さい。
今までのおわびに、毎日毎日の日記を二日ずつ位におくろうと思います。
今伊東では雨がザーザー降っています。ハワイのワイキキ海岸の人出はどうですか、
今日は雨が降っているので、どこへも行けないのでつまらない、早く家へかえって、
ピアノのレッスンや、バルド(注)の手入れをしなくちゃ。それではみじかいですけど、
see you later goodbye.
克久
(注:バルド・・・飼っていた犬の名前)
パパ
大変ごぶさたいたしました。もういよいよお帰りになる日が近づいてきましたね。
うれしくてうれしくてしかたがありません。本当にずい分長いご旅行でしたからいつもの旅行より
お土産は多いだろうと我が家の一同はとてもとてもたのしみにしております。
日本は十月に入ってめっきり寒くなってみんなセーターを着ております、
そちらはいかがです?パパは羽田へ着くなりブルブルッとするでしょうね。
この間のパパのお誕生日はごはんをたべてからおかしをたべながら出来た30曲も入ってる
パパのヒットアルバムを全部歌いそれからちらかし(注)をやりました。
とっても面白かったけどパパがいないのでやってる最中にユーモアがなくなんとなくさびしいでした。
でもパパもうじき帰って来るでしょ、そうしたらもう一度やりましょうね。
たのしみにしています。
パパもうじきかえるのだから合服・冬服・オーバー・冬のクツその他日本にない物すばらしいもの
たくさんおくってねっ、お・ね・が・い・よ(あつかましいかしら)
じゃぁさようならお病気なさなないようにね。元気で帰っていらっしゃるのをおまちします。
最愛のパパへ
初音
(注:ちらかし・・・服部家ではやっていた遊び)
パパおげんき?オカシ・くつ・ヨウフク・ほん・ヌリエ・ふでばこ・キセカエ・ぶんぽうぐ
どうもありがとうございます。こんどはアイ服オーバーをおねがいします。
オルちゃんは大阪へ七月二十日に行きました。そして十一日みなさんにおくられて
伊東へまいりました。マックロよっ早くゆえばハワイ人、しばらくしてタアちゃんがしばらくぶり
で富山から来ました。おやつはパパがおくってくだすったおかしです。
オイシイわーとても今年の夏はパパがいなくってもおもしろかったわ。
伊東は雨がふったりお天気になったりしています。
山ゆりがきれいにさいています、大家さんのおばさんがとてもしんせつにして下さるので
とてもうれしいです。おばさんは二十五年前にアメリカへ行ったそうです、ママがもってきた
パパがおくって下さった本を見たらおばさんはとてもなつかしがっていました。
そしてパパのみやげばなしがききたいんですっていっておりました。
本国のごようすをおしらせください、カサギさんによろしく
グッドバイ
スキナスキナスキナスキナ・・・パパへ
オルチャンより
パパくつとようふくありがとう、あのえんぴつのふでばこは
あこちゃん(早苗)がもらいました。またこんどおくってね、
「あこちゃんもアメリカにいきたいなぁ」パパあこちゃんならアメリカにいかしくれるでしょう
あこちゃんたちは六日から学校がはじまるのよ、あっそうそうまだあめもあったわね
あめどうもありがとうばあちゃん(注)かさぎさんにもよろしくいっといてね
ではさようなら
パパへ
さなえより
(注:ばあちゃん・・・服部富子さんの愛称)
パパ、ぼくにもえんぴつおくってね。
パパくつありがとぉ。パパのめはやくなおして、はやくかえってきてね。
パパのことをかんがえます。
パパのおくったバンドはだれのですか。
パパアメリカでいっぱいえいごをならってきてね。
アメリカのあめはあんまりおいしくないですね。
だからこんどはなんにもはいってないいたチョコをおくってください。
ぐっどばいばい
おとおさんへ
3日 日よおび
よしつぐより
ようやく今日十八日にホノルルへお着きになったと聞いてホッと致しました。
一時はどうなすったのかと本当に心配で、毎日毎日何か手掛かりでもと、新聞をすみからすみまで、
あんなにていねいに読んだのははじめてです。
松尾さんの方へも毎日問い合わせましたがさっぱりよ様子がわからず、やっぱり一寸大阪あたりへ
いらっしゃったのとは大分違うなとしみじみ心細くなりました。
ウェーキ島に二日間もいらっしゃったのですってね、さぞかしおたいくつなさいましたでせうね。
でも結果的見れば思いがけなく二日間もの休養が取れてお体の為にはかへってよかったかもしれません。
兎に角あまりにも御忙し過ぎましたもの、予定通り行けばこちらとは一日違いですから今日は初日ですね。
人一倍手の掛かる御二人の事ですから今頃は一体どんなにしていらっしゃるかと心配です。
唯々御成功を切に切に切に切に祈って居ります。
そちらの事を色々に考えておりますと、あんまり胸がふくらみすぎて、時々奇声を発しては、
子供達にお母さんおかしくなったみたいねと笑われて居ります。
こちらはお発ちになった日の夕刊は各紙共全紙三面に、写真入りで記事が出て居りました。
それから翌日の事。「扉に一分ゲーム」で「アメリカへ行った笠置しづ子と服部良一」という問題が
出まして、これはさすがに藤浦さんがあざやかなご名答振りでした。
今日世界の音楽でビギンザコンガをやるので小川(寛興)さんは放送局へ行って居ります。
山の彼方の録音は二十七・八日にきまりました。
良ちゃん(水谷良一)は十八日朝大阪へ帰りまして、目下の所我が家は十人と三匹です。
どう考えてもあまり少人数でさびしいなぞとはいへないのですけれど、でも何となく、唯何となくです
「起きて見つ、ねて見つ蚊帳の広さかな」といふ句を今更乍らしみじみと味わって居ります。
ではお忙しいでしょうけれど一日も早くそちらの御消息おきかせ下さいませ。
皆でひたすら待ちこがれて居ります。
では呉々も御体を御気を付けになってくださいませ。
六月二十三日
万里子